アフリカで生まれた人類が、世界へ足跡を広げていった冒険の記録。National Geographicが取り組むthe Genographic Projectは、世界中に散らばる人種のDNAから、人類の冒険の軌跡を読み取ろうという壮大なプロジェクトで、第一回の特集番組を見たときに非常に感銘をうけました。
The Genographic Project - Human Migration, Population Genetics, Maps, DNA
人のDNAには、数百世代にわたって変化することがあまりなかった重要な遺伝子マーカーが含まれており、世界各地の民族の遺伝子マーカーの種類を調べることで、民族がどのように分化していったか、その行程を世界規模で追跡できる。
アフリカのブッシュマンから始まって、中近東カザフスタンでヨーロッパとアジアに別れ、アジアのさらに先、アラスカを渡って南米のインディオまで。遺伝子マーカーによって、すべての人類がつながるというもの。その移動の順番通りに、民族の顔写真を並べてみると、驚くほどスムーズに顔の特徴も変化していく。
世界各地の先住民族へのフィールド調査にもとづいているので、ときには先住民族が受け継いでいる、「我々はどこから生まれたか」という伝統的な宗教観とぶつかることもある。
アメリカのネイティブ・インディアンの神話を伝える老人が、「その知識(遺伝子マーカーが証明する人類の起源)を知って、自らの神話にたいして疑問を持つことはない。ただ他方で、地球の裏側の人との共通点に気づいて、お互いに理解することができるのは素晴らしいことだ。なぜなら、我々はつねに『なるほど、そうだったのか』という発見に喜びを見出すからだ。」という言葉が印象的でした。
「ジェノグラフィック・プロジェクト」の3つの柱
1. フィールド・リサーチ
世界各地の先住民族からDNAサンプルを採取し、現地調査を実施。これが当プロジェクトの中核となります。先住民族から採取した血液サンプル中のDNAには、数百世代にわたって変化することがあまりなかった重要な遺伝子マーカーが含まれており、古代の人類の移動パターンを知るうえで信頼性の高い指標となります。
ウエルズ博士をはじめ、全世界の研究所から集まった科学者たちがフィールドワークと研究所での調査に当たります。国際的な諮問機関を設置し、テストする先住民族の選定や厳しく定められた採取・調査手続きが守られているかなどを監視します。
2. 一般参加と周知キャンペーン
一般の方々もプロジェクトに参加できます。参加キット(99.95米ドル、送料・手数料は別)を購入し、頬の内側から採取したサンプルを提供していただきます。参加者はプロジェクトの進捗状況、また自分の先祖がたどった移動の歴史を知ることができます。参加者のプライバシーを守るため、個人情報は匿名で、厳重に管理されます。
ナショナル ジオグラフィック協会とIBMはプロジェクトに関する最新情報を、ウェブサイトやナショナル ジオグラフィック協会の運営する様々なメディアを通じて、定期的に一般の方々や科学界に提供していきます。
また、『アダムを探して』(仮邦題、原題『The Search of Adam』)と題したテレビ番組を制作し、米国では「ナショナルジオグラフィック・チャンネル」の「エクスプローラー・シリーズ」で、また世界各地の「ナショナル ジオグラフィック・チャンネル」で放送する予定です。
3. ジェノグラフィック・レガシー・プロジェクト
一般の方々にご購入いただく専用キットの販売収益は、将来実施されるフィールド・リサーチや継続される事業の資金に充てられ、世界各地の文化に焦点を当てた非営利団体「ナショナルジオグラフィック協会」の研究活動を支えることになります。具体的な継続事業としては、当プロジェクトに参加する先住民族の教育や文化保護といった活動を支援します。
IBM ニュース - Japan 2005-04-13 人類がどのように地球上に広がったかを探るプロジェクト
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